コラム

言語聴覚士は開業できるの?


言語聴覚実習風景

言語聴覚士は開業が可能なのでしょうか?

できます。可能です。実際に開業をしている言語聴覚士が、年々増えています。理学療法士や作業療法士は開業できませんから、リハビリテーション職種の中でも言語聴覚士は特別な位置にあるといっていいでしょう。

では、言語聴覚士はどのように開業しているのでしょうか?

一番多いのは、小児を対象とした開業です。「ことばの教室」や「子どもの発達相談・支援室」といった業態で開業している言語聴覚士が比較的多いようです。
そこでは、発音があまり上手でない子どもの発音訓練をします。また、発達障害の子どものコミュニケーション能力を伸ばす働きかけを行います。自閉症スペクトラム障害(自閉症、アスペルガー障害)やAD/HD(注意欠如/多動性障害)、LD(学習障害)の子どもです。子どもの個性を分析し、どの能力を伸ばしてあげるのかを判断し、訓練します。
このときの分析や判断に言語聴覚士の「専門家の目」が大切になります。偏見や思い込みによる独り善がりの訓練では、子どもが不幸になります。

また、成人の発達障害も社会生活に困難さを生み出します。大学や専門学校などでの学業不振や就職活動の難しさ、仕事上でのトラブルなど。周囲に理解されずに苦しんでいる人も多いと言われています。発達障害の成人を対象に、相談やアドバイスを行うことを専門として開業している言語聴覚士もいます。
こうした開業は、部屋が一つあれば足ります。部屋を借りてもいいですし、自宅の一部で開業することも可能です。小規模なので、初期投資が非常に少なくて済みますし、固定費もあまり掛かりません。リスクの少ない開業と言えましょう。しかし、このような開業は医療保険や介護保険の対象外なので、利用者の方は全額自己負担となります。そのため、開業している言語聴覚士の経歴や評判、口コミなどはとても大切になります。

一方、大きな規模で開業している言語聴覚士もいます。

デイサービスの開業です。デイサービスの開業には看護師や介護スタッフ、送迎スタッフなどを雇用する必要があります。また、人数に応じた建物の広さや、入浴や食事のサービスも提供するとなると、それらの設備も必要になります。初期投資は大きいですが、動く金額も大きいので、経営者としての収入も高額になる可能性もあります。もちろんリスクも大きいので、言語聴覚士としてだけでなく、経営者としての十分な知識と能力も必要です。
また、看護師や理学療法士・作業療法士と協同で訪問看護ステーションを設立し、訪問リハビリテーションを開業している言語聴覚士もいます。
このような開業は介護保険の対象となるので、利用者の自己負担額が少なくて済むことがメリットとなります。しかし、介護保険の対象施設となるための設備・人員をそろえなければならず、初期投資が大きいのがデメリットとなります。

さて、言語聴覚士の開業について簡単に紹介してきました。「独立開業したいから言語聴覚士を目指す」という人は少ないかもしれませんが、「言語聴覚士なら独立開業もできる」というのは将来大きな魅力になることでしょう。

言語聴覚学科 教員 西片裕




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